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ニュースリリース

アルテックと長岡技術科学大学の共同研究成果が2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に展示 ~医療・バイオ・化粧品分野に応用可能な層状リン酸八カルシウム成膜技術~

2025/04/25

アルテック株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:池谷 壽繁(いけや とししげ)、東証スタンダード:証券番号9972、以下アルテック)は、長岡技術科学大学・多賀谷 基博(たがや もとひろ)准教授との共同研究により、体の中への吸収性が高く骨を再生する効果に優れた「層状リン酸八カルシウム」を金属等の固体表面にナノスケールで成膜する技術を世界で初めて実現しました。この技術について、特許出願、論文掲載、大阪・関西万博への展示に至りましたので、お知らせいたします。

説明

日本は現在、世界でも類を見ない 「超高齢社会」 に突入しており、日本人の平均寿命は世界屈指の長さを誇っています。しかし、単に寿命が延びるだけでなく、健康で自立した生活を送ることができる 「健康寿命」 の延伸が重要な課題となっています。その健康寿命を脅かす主な病症として、関節疾患などの「運動器障害」が挙げられます (厚生労働省 「国民生活基礎調査」)。現在、要支援・要介護患者の約4分の1が運動器障害であり、その大部分 (約85%) が関節疾患とされています (新健康フロンティア戦略賢人会議 「新健康フロンティア戦略アクションプラン」)。この問題を解決する手段として、骨を再生する材料をはじめとする医療・バイオ素材の開発が有効となります。

多賀谷准教授は、スウェーデン国のBiolin Scientific社製のソフトマター相互作用解析装置(QCM-D装置 (*a))の計測技術に関して、アルテック株式会社と共同研究を推進してきました。この研究過程において、多賀谷准教授は、リン酸八カルシウムの層状構造を維持した状態で金属等の固体表面へ均一に成膜できることを見出し、その膜表面が100結晶面(*b) を露出していることも発見しました。さらに、この膜はQCM-D装置用のセンサ表面をも被覆でき、QCM-D装置における計測能を発揮することも分かっています。

以上の技術に関して、長岡技術科学大学とアルテック株式会社が共同で特許出願(*1)し、米国化学会誌のACS Biomaterials Science & Engineering論文掲載(*2)されました。

用語

(*a) QCM-D装置: 生体分子のリアルタイムな反応の計測や生体材料の良否の判定などに用いられています。

(*b) 100結晶面: 層状リン酸八カルシウムの結晶面の一つで、骨の再生を促すタンパク質と強く結びつきます。

成果

(*1) 特許出願: 多賀谷 基博、周 燕妮,劉 自振,松浦 良典,荒川 勇,「リン酸八カルシウムの結晶膜およびその製造方法」 (出願人:アルテック株式会社,国立大学法人長岡技術科学大学)、国際出願PCT/JP2024/2936 (国際出願日:2024年1月30日).

(*2) 論文掲載: Yanni Zhou; Zizhen Liu; Daichi Noda; Iori Yamada; Motohiro Tagaya, “Preparation of Octacalcium Phosphate Thin Film with Exposing Reactive Crystalline Plane in Biological Fluid“, ACS Biomaterials Science & Engineering, 11(2),1150–1160 (2025).

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsbiomaterials.4c02011

(ACS Biomaterials Science & Engineeringの評価:

2 Year Impact Factor 2023: 5.5, Citations 2023: 18,301, CiteScore 2023: 10.3)

 

展望

多賀谷准教授は、層状リン酸八カルシウムの膜化によって、体になじむ性質 (生体親和性) と安定性の両方が向上する現象を見出しました。特に、膜化によって、骨の再生を促すタンパク質を選択的に吸着する 「100結晶面を露出した膜」 になるため、骨の再生に有効です。さらに、この膜は体中の酸性の環境下における安定性も確認されています。つまり、「体へのなじみやすさ (生体親和性)」 や 「骨をつくる能力 (骨再生能)」 だけでなく、「体の中で緩やかに吸収される性質」 といったリン酸八カルシウムが元来有する特性すべてを高めることができました。将来的に、以下の分野への応用が期待されます。

骨の再生を促すフィルムとして:

層状リン酸八カルシウムを成膜したフィルムを骨欠損部に貼り付けることで、周辺の骨組織との融合・一体化を促して骨の再生を活発化させることができます。これにより、従来のアパタイトを用いた治療法に比べて、治癒までの期間が大幅に短縮できることが想定されます。

小型医療器具表面のコーティング剤として

縫合糸やカテーテルをはじめとする体の中で用いられる器具は、体の中に一定期間留まるため、器具が体になじまない場合には異物感を引き起こします。そこで、これらの器具の表面に層状リン酸八カルシウム膜をコーティングすることで、周囲の組織と早くなじんで異物感がなくなります。さらに、器具を挿入した部分 (穿刺部) の回復も早まる効果も期待されます。

薬物を緩やかに放出する治療用フィルムとして

層状リン酸八カルシウムのフィルムは、皮膚などの酸性の環境で安定であり、中性の環境では徐々に溶解する性質があります。この性質に加えて、リン酸八カルシウムの層状構造に薬物分子を挟み込むことができます。そのため、薬物を保持した層状リン酸八カルシウムフィルムとして、体の中の中性環境において、生体組織に貼り付けることによって薬物をゆっくり放出し続ける治療用フィルムへの応用も期待されます。

特定のタンパク質を補足するフィルムとして:

層状リン酸八カルシウムのフィルムの特徴である100結晶面は、骨を再生するタンパク質を選択的に補足することが知られています。そのため、本フィルムは、骨を再生するタンパク質をはじめとする特定のタンパク質を補足して検出したり回収するためのキットとして応用することも期待されます。

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)展示

以上の技術に関して、アルテック株式会社より、2025年4月29日から5月5日まで、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博) 『未来社会ショーケース事業』 「フューチャーライフエクスペリエンス」 で期間展示されます。アルテック株式会社の展示ブースにおいて、層状リン酸八カルシウム膜の様々な応用例について分かりやすい動画を用いてご紹介いたします。是非とも奮ってのご来場をよろしくお願い申し上げます。

関連サイト URL
アルテックホームページ内プレスリリース
https://www.altech.co.jp/item_news/lg-202501-2
大阪・関西万博公式サイト内プレスリリース
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20241120-01/

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本件に関するお問い合わせ

アルテック株式会社(特許出願 及び大阪・関西万博展示に関しまして)

所在地 : 東京都中央区入船2丁目1番1号 住友入船ビル2階
担 当 : ネクシード営業部
TEL      : 03-5542-6755
E-mail : ml-nexceed@altech.co.jp

担 当 : 広報・IR課
TEL      : 03-5542-6775
E-mail : ml-koho@altech.co.jp

長岡技術科学大学 大学戦略課 企画・広報室(論文掲載に関しまして)

TEL   : 0258-47-9209

E-mail : skoho@jcom.nagaokaut.ac.jp